維持更新・保全技術


高度経済成長期に建設された膨大な道路インフラが高齢化し、修繕や更新の時期を迎えています。また、頻発する自然災害による道路インフラへの被害も発生しています。当社は長年培った橋梁建設技術に加え、高度な点検・診断技術により、道路インフラの長寿命化や更新に取り組んでおり、安全・安心のまちづくりに貢献しています。

鋼橋の点検・診断・補強

高度経済成長期に建設された重交通路線の鋼トラス橋の腐食調査と補強設計、施工を行いました。腐食による板厚の減肉量の計測には、塗膜・錆の上から板厚計測が可能な超音波板厚計測機「Cメジャー」(三菱重工メカトロシステムズ㈱保有)を用いました。板厚が減肉している橋の保有耐力を把握するために応力頻度計測を実施し、橋体に発生している応力度の評価を行った上で補強範囲を決定したことにより、経済的な補強設計を実現しています。減肉部の補強は、エポキシ樹脂系のパテを塗付して平滑に仕上げた上で高力ボルトによる当板補強を実施しました。



大規模鋼桁改良技術

大阪都市圏を東西に結ぶ阪神高速13号東大阪線のうち、歴史的に重要な文化財である難波宮史跡を通過する高架橋は、史跡保全の観点から、支間10mと極端に短い単純鋼床版I桁を多数配した特殊な高架構造が採用されていました。この特殊な構造が原因と推測される重大なき裂が幾度となく確認され、応急的な補修が実施されてきましたが、将来における維持管理の軽減および損傷発生リスクの低減に向け、大規模な構造改良が必要となりました。この課題に対し、当社はわが国初となる1支承線化による部材取替連続化工法による抜本的構造改良を、8日間という短期の昼夜連続完全通行止めの期間にて施工し、大阪都市圏の大動脈である東大阪線への影響を最小限にとどめて完工しました。長年の橋梁建設で培った技術を基に、構造改良の新たなソリューションを提供していきます。



吊材のリフレッシュ技術

吊構造の橋梁(吊橋、斜張橋、アーチ橋等)にとって、吊材は橋を支える重要な部材の一つです。近年、腐食や疲労によって、ケーブルに損傷が発見されるケースが増えてきました。吊材が損傷した橋梁は、文字通り支えを失った状態となり安全性が損なわれ、通行止めを余儀なくされるため、一刻も早い原因究明や応急対策を行う必要があります。この課題に対し、当社は橋体の復元設計技術に加え、破断面のミクロ組織を確認するといった詳細な調査を実施し、橋体の安全性を早急に診断する技術を有しています。また、吊材の張力計測には通常、加速度計を用いますが、当社では、プラント分野で用いられるドップラー振動計を活用した非接触張力計測手法を用いることにより、高精度かつ短期間に張力計測を完了し、早期の道路復旧を果たすことができます。




重要文化財永代橋の長寿命化工事

永代橋は、大正15年に建設された鋼3径間カンチレバー式タイドアーチ橋であり、近代東京の震災復興を象徴した、わが国の重要文化財です。長寿命化検討の結果、耐震補強対策が必要とされたため、水平支承の追加や変位制限装置の改良を施工しました。水平支承の追加においては、クリアランスがなく限られた空間に部材を設置する必要があり、高精度な施工が可能であるデジタルカメラによる3次元計測を活用して施工を行いました。また、実物大模型や3次元モデルを用いた事前検討により、部材の搬入時や設置時に橋体を傷付けないよう十分に配慮しました。わが国初の重要文化財橋梁の本格的な長寿命化工事を無事に完了させた当社は、今後も高い技術力で、難度の高い補修工事に取り組んでいきます。



疲労損傷を受けた橋梁の補修・補強技術

重交通路線下の橋梁においては、溶接部に繰り返し応力を受けることにより生じる疲労損傷(き裂)が発生することがあります。当社では、このような疲労損傷を受けた橋梁に対し、損傷程度の確認、損傷要因の究明、対策と実施、その実施効果の確認まで一連の方策を体系的に実施しています。

■ 非破壊検査による損傷程度の確認

■ FEMによる原因の究明と対策効果の確認


■ 実橋の応力頻度計測による原因の究明と対策効果の確認